今、企業で「心理的安全性」ということが流行ってるらしい
- 日本アサーション協会
- 10月1日
- 読了時間: 4分
先日、偶々聴いたラジオで「今企業で心理的安全性ということが流行っている」という話を聞いた。組織の中で自由にものが言えること(いわゆる風通しのよい風土)はどこの組織でも求められることだがそれがさまざまな理由で難しいのが日本の企業の現実だ。このことは人事や総務担当のみならず多くの経営者を悩ましていることでもある。特に、近年は企業内での働き方の多様性や人権意識の高揚によるハラスメントへの警戒意識から中間管理職(マネージャー層)にとっては、部下指導に際してコミュニケーションの取り方に一層苦労する時代になっているそうだ。以前から旧来型の縦型社会の意識が強い企業だと上司・部下関係はもちろん、会議などでも忖度が働き社員の自由な意見表出が見られないことも問題視されてきた。名の知れた企業での組織的なスキャンダル(いわゆるコンプライアンス違反)が度々マスコミを賑わすが、きっと現場では「これっておかしくないか」と問題意識を抱く人がいる筈である。にも拘らずそうした問題が組織として取り上げることがないのは硬直化した組織内のコミュニケーションのあり方が影響していると思われる。
ラジオの話に戻ろう。「心理的安全性」を感じる職場とするには、まずは「対話の機会を増やすこと」が大事と言う。「デスヨネー」と反応したいところだ。それも組織のトップが率先して行うこととし、仕事の話をしない対話、つまり「雑談」を推奨していた。つまり、トップが積極的に雑談に加わることが「心理的安全性」を高める突破口になるという訳だ。なるほど、そこから始めるのかと頷ける一方、昨日まで仕事の話しかしなかった上司がいきなり「昨日の大谷はすごかった」などと言い出したら聞く方は少なからず戸惑うだろうなともひとりつぶやいた。

ところでCAATが目指すところは、個人としてアサーティブな表現の習得を土台にしつつ更に組織自体のコミュニケーションのあり方の活用を目論んでいる。つまり組織で起きていることを研修のターゲットにしている。今の企業内での人の構成を考えると、パートや派遣社員、非正規と正規のように働き方が一様ではない。そもそも一人一人考え方や価値観も違う。文字通り多様な人たちで構成されている。それが一つの目標に向かって働いている。多様性を活かしつつ生産性が求められるのが現代の企業の望まれる姿ということになる。
こうした状況にCAATは「協働」という概念を中心に組織内コミュニケーション全体に新しい視点を持ち込もうとしている。CAATが組織までをターゲットにした研修としたのにはそれなりの理由がある。それは、個人のアサーティブな表現の習得を目指すだけでは今の日本の組織はなかなか変わらないのではないかという危惧による。
企業がアサーション研修を導入し始めた2000年代初頭は、主に新入社員研修としての位置づけが多かった。組織内での円滑なコミュニケーションの場の創設として、もっとも意見などが言いにくいであろう入社間もない社員がその対象であった。そうしたことが効果がないという訳ではないが、やはり組織内で強い立場である上層部の人たちの意識が変わらなければ、なかなか組織の風土は変わらないというのが実情である。そこで、管理者も含めたコミュニケーション活性化の研修として組織を活かすということ、そこで働く一人一人が自分らしく生きられる職場作りを目指しCAATが開発されたと認識している。アサーティブなコミュニケーションが交わされることと「心理的安全性」が高まることは相互に深く関係し影響し合うと思える。「雑談」という突破口はいわば脇からの対策と言えるが、CAATは組織が抱える課題に正攻法で向き合う研修と言えるだろう。それだけに研修では多くの視点から組織内コミュニケーションのあり方にアプローチしている。一度そのだいご味を味わって欲しい。 八巻 甲一
参考:NHKラジオ「マイあさ」2025年9月17日放送