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「たしなむ」ということばに惹かれませんか。 八巻甲一

最終更新: 4月3日


 いつ、どこで誰に聞いたのか忘れましたが「たしなむ」という言葉に最近惹かれています。なんとなく、言葉の響きがよいことが関心を持ったきっかけです。「たしなむ」日常があると考えた時、それだけで人生が豊かになるような、料理で言えば隠し味とでも言えそうなものだと直感的に感じたのです。そこで「たしなむ」を辞書で引いてみました。すると「嗜む」のほかに「窘む」という漢字が出てきます。こちらの窘む」は苦しむとか悩む、辛苦するという意味でした。敬遠したいことばです。また、同じ漢字で窘める(タシナメル)」というのがあり、その意味は苦しめるとか咎める、戒めるという意味になるというのではますます近づきたくないです。私が近づきたいのは「嗜む」の方です。近づきたいと思わず書きましたが、そう、この「嗜む」はこちらから近づこうと努力しないと近づけないもののようなのです。


 ということで親近感を感じる「嗜む」の方に目を向けてみました。調べてみますといくつもの意味があります。「酒をたしなむ」のように①好んで親しむとか、「謡曲をたしなむ」のように芸事を指す意味もあれば、②好んでそのことに励むことも意味します。また③「行いをつつしむ」のような意味もあり、④「前もって用意する」とか「心がける」という意味もあります。さらに⑤「見苦しくないように(身なりを)整える」という意味もあります(小学館、デジタル大辞典)。うーん、どれもこれも私の日頃の行いとはずいぶん違うことを指しています。お酒は殆ど毎晩飲みますが私の場合「嗜む」という語感とちょっと違う感じです。「酒をたしなむ」という響きは酒を味わいつつそこから拡がる世界があり、それに心地よく付き合うようなイメージが湧きます。その日あった出来事や酒の肴に思いを馳せたりとしみじみとした時間が流れそうです。たとえ苦々しい想いが湧き出てきても、それを受け止める気持ちの余裕があっての「嗜む」という感じがするのです。そうした境地になれるのが「たしなむ」ことだろうと思うのです。ところが我が身を振り返ってみると日々の私のお酒との付き合いにそのような余裕はありません。取り合えずグイッと喉に流し込んだ次の瞬間、箸が食べ物をつまんでいます。そしてまたグイッ! せっかちなのです。「たしなむ」に惹かれる理由が分かったように思います。要するに自分には近づけないから、ありたい姿として憧れるということなのです。


 そんなことを考えていたら偶々見たテレビで「たき火」が主役という番組に出会いました。ご存知の方もおられるでしょうが、30分間のその番組は「たき火」を囲んで3人の人物が語り合うだけです。語り合うといっても誰かがボソッと(誰かに)尋ねます。尋ねられた人は聞こえているのかいないのか応える素振りが見えません。カメラはパチパチ燃える「たき火」とその火に照らされじっと「たき火」を見ている3人を交互にゆっくり映しているだけです。そうこうしているとその人がボソボソッと話し出しました。そうか、何か言おうと考えていたんだなとそれで分かります。それもそう長く話しません。又、しばし沈黙が続きます。そして画面は燃える「たき火」だけです。やがて辺りが夕闇に包まれて行きます。この番組は「たき火」が主役ですが、それを引き立てているのは会話の中に存在する「間」だと思います。会話がない時間のこの「間」がなんとも心地よいことに気がつきます。「たき火」を見つめながら自分の世界に浸っていられるのです。私にも「たき火」を愉しんでいた小さい頃があったのを想い出していました。30分はあっという間に過ぎました。番組が終わっても余韻があります。穏やかな時間を持てた感じです。


 ウイズコロナの時代になって、時間は以前よりある筈なのになんだかせわしい日々です。何かに駆り立てられているような感じになるのは私だけでしょうか。「Go To ~ 」などと言われるとそうしないと損するような気分になります。私は日々の中で穏やかな時間を取り戻そうと思います。そんな時間が持てた時が私にとっての「たしなむ」ことだと思えるのです。




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